Cosas libro19
2025年の写真から
封をあける
時代小説を好きになったきっかけは、山本周五郎の作品です。
この二冊は、数年前、生家に滞在していたときに手持ちの本では足りなくなり、母には内緒で父の本棚から拝借したままの本です。
どちらも以前に読んだことはあったけれど、物語を忘れていたので重読のための拝借でした。
『人情裏長屋』は秀逸。なんど読んでもすごい短編集です。
『あんちゃん』に入っている『思い違い物語』。最高すぎます。
長距離を歩くザックにこの文庫も入れようとした早朝、拝借以降なんども読んでいたのに見ていなかった『あんちゃん』の奥付のページをたまたま見ました。
そこには父が短い言葉を残していました。
発行年から、父が長い病床生活のおわりに近いころに記したものだと想像しました。
せつなくて後悔ばっかりだったけれど。
とじていた記憶の封をあけたのは、やっぱり父でした。
山本周五郎の作品にであった日のこと。
借りたままのカメラ。
2025年2月記